恋するキモチ

「あの、すみません」

にっこりと笑って手帳を見せる。

「私、捜査一課の杉本といいます」

「はぁ…」

突然若い女が、捜査一課だと言って手帳を見せてきたことに、男性は少し怪訝そうな表情をする。

「あの、よくこの辺でジョギングされてるって聞いたんですけど、毎日やってるんですか?」

「は?…そうだけど」

京子の質問の意味がよくわからず、少しだけ眉をひそめながら男性が答える。

「すごいですね!私も健康のためにってやってみたりするんですけど、なかなか続かなくって」

目をキラキラ輝かせながら、少し大げさに驚いてみる。男性はその様子に、少しだけ気を良くしたようで、小さく笑った。

「まぁな。結構根性のいることだし。なかなかできるもんじゃないみたいだけどな」

「そうですよねー」

「それに、この辺は公園も多いし、夜になると人気も少なくなるから、ジョギングにはもってこいなんだ」

「へぇ!そうなんですか!」

京子は興味津津、といった表情で男性を見つめた。

「毎日ジョギングされてるってことは、この近所に住んでるんですか?」

首を傾げながら聞くと、男性は首を縦に振った。

「ああ。すぐ近くのマンションに住んでるよ」

「やっぱり、ジョギングとかするとなると、近所じゃなきゃ不便ですもんね」

「まぁね。ジムに通ってみたりもしたけど、結局、こうやって家の近所をジョギングするのが一番簡単だし、金もかからないしね」

へぇ、と感心したように京子は頷いた。