しかし、今は彼の病気のことがなんだか大事に思えて仕方なかった

私は、ちょっと考えてこう言った

「それは、違うんじゃないかな?誰だっていつかは死ぬんだし

それが判ったからといって

貴方の生き方を変える必要はないんじゃないですか?」

「そうかな・・・」

それっきり彼は喋らなくなった

重い空気というか、ゆっくりとした流れる時間だったけど

私は最後にこれだけは言っておきたかったので

「理由はどうであろうと、貴方が大切にしている人、

間違い電話だったけど

その洋子さんには話したほうがいいと思います」

当たり前の事を普通に言ってしまった

人を感動させたいキャッチコピーを考えたい・・

人に何かを感じてほしいという理由が

私が今の仕事を選んだ理由だからだったからだけど

なんだか人って混乱したときは普通になってしまうらしい

そんな余計なことは頭をよぎっても思いつくことはなかった