【かすみside】
「おはよう。一条かすみさん」
「おはよう」
・・・?誰だけ?
同じ制服を着た学生が行きかう朝のいつもの光景。
そして今日も知らない人から挨拶される。それに笑って答える自分。
「ちょっと、ちょっと!かすみ!今日のは、1年B組の竹下君だったね」
そう声を掛けてきたのは同じクラスの京子ちゃん。
「おはよう、京子ちゃん。私の知ってる人?」
「かすみと竹下君の接点は今までないよ。まぁ、人気が高い竹下君が勇気出してかすみに声を掛けてきたということは・・・察してあげなさいよ。いや~、モテまくりのかすみが羨ましいよ」
京子ちゃんは私を冷かすように笑って言った。
「で、何?何を察するの?」
京子ちゃんは唖然とした表情で、がっくり肩を落とす。
「恋愛の1つも知らないかすみが可愛くて仕方なかったけど、いい加減自覚なさい!」
京子ちゃんは私の肩をポンポン叩きながら親のように言った。

恋愛ね・・・。
興味がないわけじゃない。
ただ、よくわからない。
大人になればわかるだろう、そんな軽い気持ちで今まで過ごしてきた。
「先週のバレー部の先輩は?」
「付き合ってくださいって言われたけど、何に付き合うのかわかんなっかたし、その前は好きだって言われたけど、ありがとうって言っておいた。よく考えたら、何がありがとうなんだろうって、自分でもわからない」
私は淡々と話した。
「本当によくみんな諦めてくれたよね。普通なら、襲われるか、ストーカーだよ。曖昧な返事はしちゃダメ。期待させない事が肝心なの」
京子ちゃんはすごい。昔からモテまくりだったから、恋愛のエキスパートなんだ。
「いい?好きでもない人から告白されたらはっきり『ごめんなさい』。『いいお友達でいましょう』なんてありえない。好きな人から告白されたら焦らして、焦らしてOK。これがイイ女の鉄則よ」
京子ちゃんは自信たっぷりに言った。
「京子ちゃん、好きってどんなの?」
「よくぞ聞いてくれた!好きってね、彼を見ているだけでドキドキするの。心臓が泣くのよ。胸がキューンってなって、彼から目が離せなくなって、いつも彼の事を思うのよ。今何してるんだろう、とか・・・。やっとかすみの恋愛に興味もったのね?成長、成長」