大きな盛り上がりを見せて、ハヤトにとって初めてのコールは無事に終わった。
そしてその後、コールをする者は他に居なく、狙い通りラスソンをゲットしてしまった。
「ラスソン」は、その日の売上が一番高かったホストだけが営業のラストに歌える特権。
毎日毎日ホスト達は、ラスソンを歌うためにやっきになるのだ。
ナンバー外のホスト達から見れば、「ラスソン」はナンバーホストへの第一歩となる。

もちろんハヤトは、ラスソンも初めてだった。

そのときのハヤトのきょどり方と言ったら!!
手は震えているし、足はずっと貧乏揺すりしているし、
その姿はかなりの笑いを誘った。

カラオケのリモコンを内勤から渡され、
さんざん何を歌うかを迷った挙句、ハヤトはJanne Da Arcの「Dear my…」に決めた。
Janne Da Arcは、私もハヤトも大好きなアーティストだ。

静かにイントロが流れ始め、
隣で落ち着きを無くしているハヤトを、私は微笑みながら見守った。
緊張のせいか、かなり歌声が小さかったのは今となっては笑い話である。

ラスソンの間、何人かのホスト達が卓を囲んで声援を送ってくれるのだが、
コールのときに比べてやけに人が少なく、声援の声はまばらだった。
そのせいで、記念すべき初めてのラストソングだったのに、なんだか腑に落ちない結果になった。

それでも私自身は満足していた。

最っ高に楽しい!!


この日の会計は20万を超えたが、まったく後悔はしていなかった。

ホストクラブに行かない人からすれば、私の価値観がオカシイと言われるのは分かっている。
私は正真正銘のホスト狂いだ。
狂っている自覚はある。でもそれで満足している。
一時の楽しみのために何十万ものお金を使うことに、私は満足していた。

私にとって飾りボトルを入れるということは、
何十万もするブランドバッグを買うことと同列だ。



これが私の価値観なのだ。