今日の2時間はそれなりに充実していた。
一番の大きな理由は、2時間の間、ハヤトが一度も卓を離れなかったことだ。

卓が被らない。

これが新人ホストを指名する大きな魅力の一つ。
そのことに私は満足していた。
常にナンバーに入っていた「前の」担当はいつも卓が被り、担当と話す時間よりもヘルプと話す時間の方があきらかに多かったのだ。
焼き餅妬きで独占欲の強い私にとって、卓が被らないというのは大きな魅力になる。

ナンバーに入ってるホストにとって私のような細客は、しょせん底辺の客なんだろうけど、
ハヤトにとってはこんな私でも貴重な指名客の一人なんだなと思うと、
小さな喜びを感じた。



会計を終わらせて、友達と一緒にエレベーター前まで送ってもらい、
この日は3時過ぎに店を出た。


心の中は充足感で満たされていた。

やっぱりハヤトだ。
もちろん新人としての粗は色々あるけど、それもまた「新人ホストを育てる」という楽しみになるのではないだろうか?

たかだか1年ちょっとホスクラに通っただけの私が、「新人ホストを育てる」というのもおこがましいが、
ホスクラは楽しく飲む場所。楽しむ方法なんてお客さんの自由。

新しい楽しみを見つけて、私の気分はウキウキだった。

やっぱりハヤトを指名して間違いは無かった!


うっすらと夜が明けていくすすきのの街並みを、
タクシーの窓越しに見つめながらそう思ったのだった。