ドン


「ごめん、なひゃい」



「いぃえ、俺は大丈夫です」


「それじゃあ、あたし急ぐので…」



まったく、なんでお母さんは起こしてくれないの



入学初日に遅刻になっちゃう




「あのーかばん落としましたよー」



あたしはかばん持っていないことにも気付かないで必死で走った



「間に合った…」




遅刻はならなくて済んだみたい



でも、


「か…かばんがないよ…ひゃ…」



「かばんならここにあるよ」



後ろから聞こえてきたのは男の声



「ぁりがとお…ございます」


振り向いたら、さっき駅でぶつかった男だった


「いぃえ、俺もここの生徒だから、」



「そうなんですか…本当にありがとう、ございました」


「じゃあ、俺はこれで」


3年前の4月9日に慎ちゃんと出会った


慎ちゃんは誰よりも大切な存在だった


亜衣は慎ちゃんと出会えて何よりも幸せだったよ



ありがとお、慎ちゃん、



あたしの言葉はあなたの心に届いたかな