あたしが返す言葉を考えているうちにもう十夜くんは部屋から出ていっていた。 「亜美が婚約をいいって言ってくれるなんて正直思ってなかったよ」 嬉しそうに 頬を赤く染めて前髪をくしゃくしゃにする柘気の表情を見るとなんだか心がズキズキした。 あたしの心を誰かが刀でズタズタに切り裂いているような痛み…。 「亜美?」 柘気があたしを何度も呼んでいることに気付いてあたしは慌てて柘気の方を見た。 「なに?」