ヒナがうなずいたのを見て、オレは続けた。
「たしかに、柏木の首筋に顔を寄せた。
彼女に、好きだから体だけの関係でもいい、抱いて欲しいって言われたんだ」
言った瞬間、ヒナが息を飲んだ。
「あれは血を吸おうとしたんじゃなくて、体にキスしてたの? 彼女を抱くために」
「それも、違う。好きじゃない子を抱こうなんて、思えなかった」
オレはヒナの様子をうかがった。
ここから話すことは怖い。
でも、もう隠してなんておれない。
「その気になったふりでもして、血をいただいちまおうかとは思った。
だけど、できなかった」



