【短】甘苦い*すき

一瞬、落ちそうになったと思ったけど、



落ちなかった。





彼の両手が、わたしの手を飴の袋みたいに、
しっかり包みこんだ。





「えっ、あの……」



ぎゅっと、力がこめられてわたしはびっくりした。





「恵奈。いつも見ててくれてありがと」





早口で、ささやくように彼は言った。




「・・・・・・っ!」





彼の両手が、ゆっくり




わたしから離れると、走り去る足音がした。





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