遠くて温かい

「…ごめんね。冗談だよ」

うかがうように囁く私の声が聞こえているのかいないのか…駆の視線は前を向いたまま。

しばらく黙って歩いていると、

「左手…」

「ん?」

やっと私を見てくれた駆は、普段の悪戯好きな憎たらしい表情を浮かべていた。

何か嫌な予感。

「左手の薬指には、ゼロが一つ多い指輪はめてやるから待ってろ」

「…」

…嫌な予感は当たった。

駆の言葉が嬉しくて、涙ぐみながら下を向いて歩く私の顎をいきなり自分に向けると…

「なに…。ん…。や…」

逃げる間もなく駆の唇が落ちてきた。

深く甘く愛されてる女だけが感じる事のできる温かいキス。