遠くて温かい




会社に向かって歩いていると、思い出したように駆がつぶやいた。

「指輪…」

「ん?これ?」

右手を上げて、そのきらきらににんまりしてしまう私。

横目で苦笑しながら

「戸部さんに会ったよ」

「…?どこで?」

「その指輪買った店。
戸部さんも大切な人に渡すって真剣に選んでたよ。

それ知ったら泣く女の子多いんだろうなあ」

戸部さんが…?
あんなに人気があって、女の子からの誘いには明るく応じるくせに特定の彼女は作らない。
設計部のエリートでもあるかなりの有名人。