「おはよう」

「あ…おはよう」

朝の通勤の列に紛れて歩いていると、背後から、聞き慣れた声が落ちてきた。

駆…。

ちょっと機嫌が悪そうな低い声。

視線は私を捕らえているけれど、自信なさそうな、何かを探るような…不安定な瞳。

自然に並んで会社に向かう。
時々ちらちらと駆を見ながら、私の気持ちは少しずつ温かくなる。

「ふふっ」

思わず出る小さな笑いに、駆は更に機嫌を悪くしたように。

「…美乃。…俺を放って帰ったのがそんなに面白いか…?」

「…へっ?」