先輩は小さなテーブルにケーキとグラス二つ、それからシャンパンを並べた。



「ほら、一ノ瀬…」



『取り分けろ』と言わんばかりに、一葉の方へとケーキを向けて、目線で合図する。



箱から出されたケーキは綺麗に着飾っていて、金箔が雪に見立てて、まぶしてあった。



綺麗過ぎて、このまま食べてしまうのは勿体なくて…、

それにケーキを食べてしまったら、泊まる準備はして来たものの…先輩とのデートも終わりな気もして…

寂しかった。



ケーキに灯りを、最高のクリスマスイブを…



一葉に下さい。



「先輩、ローソク立てましょ?」



「ローソク?誕生日じゃないのに?一本だけ?」



「違いますよぉっ、一本ずつ立てるんです。立てたら、先輩と一葉が同時にフゥしましょうね」



「何か意味はあるのか?」


意味ならありますよ。



天使になる前に大好きな人と居た証。



消え逝く灯りは、命消え逝く灯り。



最後の夜、大好きな人と一緒なら、もう何も怖くないの。