「一ノ瀬…チョコ大好きだろ、いつもチョコ持ってるもんな」



ローソクの灯りを消した後、先輩が取り分けながら言う。



好みを覚えていてくれてたなんて、嬉しい限り。



先輩に会える度に大好きなチョコを渡していたの。



チョコを食べると不思議と幸せな気持ちになれるから、先輩も同じかなって思って、ね?



『男はチョコなんて嫌いなんだよ』

なんてブツブツ言いながらも、渡すとその場で食べてくれるから、本当は嫌いじゃないと思う…。



「先輩が一葉がチョコ大好きだって覚えててくれて、嬉しいですっ!!はい、あ〜ん、して?」



溜め息を一つついてから、差し出した右手を掴み、顔を近付けて、ケーキを口に放り込む先輩。



捕まれた手は直ぐに離されて、行き場を失った手だったが、すかさずケーキをすくい、自分の口に入れる。



チョコレートの甘い味わいが口の中に広がると共に、洋酒の豊穣な味わいが広がる。



一口食べただけでも、顔が火照りを覚えて赤くなる。



甘いけれども、大人な味わい。