君はここにいた。



「あ、あま…ね?」


 フェンスの向こう側で、槝木が驚いた声をあげる。


「アンタねぇ! こんなとこで何してんの?!」


 彼女が、大股で槝木の側まで近づいていく。

 それと同時に、槝木が半歩後ろに下がった。


「うっせぇよ。お前には関係ないだろ」

「黙れ、この悪党!」

「あぁ?」


 俺にはおかまいなしで、二人が言い合いをしている。

 俺はただ黙って、その様子を見ることにした。


「いいから、こっち来て! 入学式行くよ」

「誰が行くか! めんどくせぇ」

「ッたく」


 彼女が、フェンスに足をかける。
 なかなか慣れた手つきだ。