君はここにいた。



「浅葱は、なんで市立の中学いかなかったの?」


 ベンチから立ち上がり、槝木が聞いてくる。


 そんなこと、聞かれるなんて思わなかった。
 俺は一瞬、返答に困った。


「俺の親、ものすごく教育熱心でさ。有名な大学に入れるために頑張っちゃってんの。俺、長男だから余計期待されてるし」


 俺は、有名な大学に入る気なんてさらさらないけど。

 普通の大学に入って、普通な生活を過ごせればいい。それだけでいいのに。



「俺はべつに、ここに通いたかったわけじゃない」


 本当は、小学校の友達と一緒に公立の中学校に通いたかったんだ。