「ここのこと、やけに詳しいんだな」 同じ新入生の筈なのに。 俺がそう言うと、彼は小さく息を吐いた。少しだけ顔が曇って見えた。 何かマズイことでも言っただろうか。 「…そりゃ、そうだろ。幼稚園も、小学校も、ずっとここだからな」 彼はそう言って、弱々しく笑って見せた。 何故この時、彼がこんな表情をしたのか… この時の俺は、まだ知らない。