「どっから来たの?」
「新潟」
「…寒いね」
「冬はね」
新潟=寒いの関係式はどうかと思う。
僕は思わず苦笑いした。
「なんで埼玉なんかに?」
「僕に聞かれても…」
親の仕事の都合だから、仕方がないだろう。
「埼玉なんもねぇーし」
そう言って、彼は何かを思い出そうとするように上を向いて、それから、何か数えるように指を折り始めた。
「芋と茶…せんべい…喜多院…ウォーターボーイズ。あと…あぁ、レッズ」
呪文のように彼が呟く。その姿が何となく可笑しく思えて、僕は思わず声を出して笑ってしまった。
彼が、なんだよ、と顔をしかめて僕を見てくる。
僕は笑顔で、手をヒラヒラと振ってみせた。


