「…あ」



 すぐに彼の足が止まる。
 振り向いて僕を見た。

「昨日の傘、ちゃんと返したから」

 コンビニの方を指差して、彼が少し大きな声で言う。

 僕は何も答えない。 
  

「…じゃぁな」


 彼は小さく笑うと、手を振って公園から姿を消した。




 あぁ。


 また名前を聞くのを忘れた。






 僕はただ呆然と立ち尽くしていた。