一瞬だけ。 一瞬だけ、彼の瞳に哀しみが宿って見えた。 「…でも、いざページをめくってみると、真っ白なページがそこにありました。めくっても、まためくっても、その本の中には何も描かれていませんでした」 彼がもう一度大きく息を吐いた。 「…こんな感じ。ほら、よくあんじゃん。形だけの関係…みたいな」 「形だけの関係…」 “友達なんて…、あんなの形だけだよ” さっき、アサギに向かってそう言った。 そうだ。 僕にしてみれば、「友達」なんてのは、形だけの関係にすぎないんだ。