「よう! また姫泣かしたの?」 浅葱がこの部屋の主に声をかける。 「うるせぇ。あいつが勝手に泣いたんだ」 すると、部屋の奥の方から低く暗い―― しかし濁りのない透き通った ―― 声が聞こえてきた。 聴きなれた声だ。 この声……まさか! 部屋の奥で人影が動く。 ドキドキと胸の鼓動の高鳴りを感じた。 期待する。 ゆっくりとその顔が覗いた。