君はここにいた。




 目の前の背中に問いかける。



「なんで助けたの?」


「え?」



 走り出したバイクは風を切って走る。
 小さくつぶやくように問うた僕の声は、風に流されてしまった。



「なんで助けたの?」


 今度は叫ぶくらいな大声が出た。


「はー?」


 すぐに浅葱の呆れたような声が返ってきた。


「だって宇佐見、あのままだったら金盗られるか殴られてたぜ」


 それでも良かったのかよ、と浅葱は小さくため息をつくのが聞こえた。



「でも、自分も巻き沿いにあうかもしれなかったんだよ?」



 そうだ。


 僕を助ければ、自分も巻き沿いを食らう可能性がある。



 だから、僕がいじめられていたとき、それまで「友達」だった奴等は僕を見捨てたんだ。



 なによりも自分が大切だから。