君はここにいた。



「それで、何するんですか?」




 空いていた席に腰掛け、面倒くさそうにアサギが先生に訊く。

 
 すでにいる生徒は、その作業に取り掛かっているようである。
 気のせいか、みんな疲れ切った顔をしている。


「あぁ。保護者会で使うプリントをな、まとめて冊子にしてほしいんだ。
プリント一枚一枚名前書いてあるから、そこらへん間違えないように」



 先生は、山積みになったプリントを、机の上にわざとらしく大きな音をたてて置いた。


 
「なにそのダルそうな作業。宇佐見、ちゃっちゃとやって早く終わらせよ」


「うん」



 面倒なことを頼まれたな、といまさら後悔する。
 だからと言って、帰るわけにもいかない。



「じゃ、後は頼んだぞ。俺は職員会議があるからな」


 そう言い残して、先生は笑顔で教室を去って行った。