それも、彼と出逢う些細なきっかけのひとつだったんだ――。




 なんとか家族分のアイスを買い終えた僕は、何故かまっすぐ家に帰ろうとはしなかった。ふと、コンビニの側にある大きな公園へ立ち寄ってみる。


 芝生のグランドが一面に広がっている。その所々には、まだ微かに可愛らしい花を残した桜の大木が、降りしきる雨に濡れて立っている。


 なんと綺麗な景色だろうか。僕はすごく長い間その美しい景色に魅入っていた。



 ドスッ



 ふと、どこからか何か物音が聞こえてきた。顔をしかめて辺りを見回してみる。

 すぐに僕の視線は一点に止まった。



 隅のベンチに誰かが座っている。
 ずぶ濡れの誰かが。