「…同情するな」 ふと隣から低く暗い声が聞こえる。 「え?」 「そんな目で俺を見るな」 不愉快だ、と言わんばかりに槝木がにらみあげ、俺の手を振り払う。 俺は茫然としていて、思わずよろけてしまった。 あぁ、だから。 だから入学式のあの日、こいつキレたんだ。 大変なんてものじゃないんだ、こいつが抱えているものは。