「槝木はなんで本命の彼女つくらないの?忘れられない子がいるとか?」
「は?」
そう言って、入学式の時にいたあの女の子を思い出す。
黒髪の美しいスタイルのいい子だった。
たしか、「あまね」って名前だった気がする。
「もしかして、入学式の時にいた子?」
あの時、なんてお似合いのカップルなんだろうと思った。
美男美女であるからというのもあるけど、本当に好き合っているんだろうと思ったんだ。
槝木が下から鋭く睨みあげてくる。
その目があまりにも怒りを露わにしていたから、俺は思わず後ずさりしそうになった。
「あいつはそんなんじゃねぇよ」
槝木が荒々しく声を上げる。
それと同時に強い風が、俺と槝木の間を吹き抜けた。


