「俺、お前がうらやましいよ」 槝木がボソッという。 「なんだそれ。いい思い沢山してるくせに」 うらやましいなんて、可笑しい話だ。 思わず噴き出して笑ってしまった。 だけどこの時、俺は気づいてたんだ。 槝木がいまにも泣きだしそうな顔をしているのを。 それに気づきながらも、俺は見て見ぬふりをしたんだ。