「槝木、歌うまいんだな」 思わず息をのむほど美しい音色だった。 目の前のこいつが奏でていたと思うと、なんとも不思議だ。 まぁ、槝木が音痴だったら、それはそれでイメージがた崩れだけど。 「…たいしたことねーよ」 べつに照れ隠しではないだろう。 表情をいっさい変えずに、ふたたび弦をはじいた。 「さっきの…なんていう曲?」 初めて聴いた曲だったが、すごく良い曲だと思った。 歌詞ははっきり覚えていないけど…。 「まだタイトルは決めてない」