確かに、
この止まった世界、
タケシが生きていくのに、
なんら困る心配は
無いのですから…。
小腹が空いたタケシは、
コンビニに
足を向けましたが、
ふと、その隣にあった、
高級寿司店に
矛先を代えました。

「おじさん、もらうよ。」

今まさに、
特上の寿司を
箸に挟もうとする男性から、
寿司を横取りすると、
それを自分の口に入れました。

「うーん、
 ほっぺたが落ちる、
 こんな旨い寿司、
 初めて食ったよ。」

と言いつつも、
タケシには、
不甲斐なさが残っていました。
それは、罪悪感です。
タケシは、寿司を
一つ食べたきり、
外に出ると、
また、隣のコンビニに入りました。

「これ、貰うよ、
 生きる為だから。」

おにぎりを一つ手にすると、
コンビニを後にしました。
タケシは、
罪悪感に
さいなまれながらも、
自分に言い聞かせていました。

「この状況を楽しまないと、
 これは、自分に課せられた
 “特権”なんだ…。」

それは、いつ、
この“特権”が
元の世界に戻ってしまうのか、
という焦りもあったのです。