ついに、
タケシは気が動転し、
叫びました。

「一体どうなってんだーっ。」

そう言って、
男性を力一杯
押し出すと、
宙に浮いた男性は、
静かに転がりました。
それは、
木で出来た人形の
ようでした。
タケシは、周りを見渡し
、一緒に来ていた、
友達のコウイチと
ユウコの所に
駆け寄りました。

「おい、
 コウイチ、
 ユウコちゃん…。」

やはり、
二人とも反応はありません。

 タケシは、
しばらく立ち尽くしたあと、
結論を出しました。

「これは、
 冗談じゃなく、夢でもない、
 すべてが止まったんだ。
 すべてが…。
 波も、人も、空気も、動物も…。」

上を見上げると、
鳥が浮いたままです。
しかし、
空をじっと見つめていると、
一瞬、
空が動きました。

「あれっ?」

空が不自然に割れ、
薄暗い、
別空間が覗き込んで
いるかのようです。

『ジジジ、ジジ…』

かすかに、
電磁音のような
鈍い音が響きました。

「なんだあれは、雷…?」