ジ…。
ジリジリジリジリジリリリリーン。


「ふぉ…」
高らかに鳴り響く目覚まし時計の音に、ベッドの中からサンタさんがむくりと起き上がりました。


「おや。もうこんな時間かの」
時計の針が指し示す時間に、寝ぼすけなサンタさんも慌てます。


ごしゅごしゅごしゅ。
それでもとりあえず、時間をかけて丁寧に歯を磨きます。


居間のストーブには、もう火が入っていました。シューシューとやかんが音を立てています。
トナカイが、サンタさんのために用意してくれたのでしょう。
「おお、トナカイ。待たせたの」
「用意できましたか?」
「もちろん、万全じゃとも!」
「じゃあ、行きましょうか!」
世界一早いトナカイの足が、サンタさんを世界中へ運びます。
寒い寒い雪の中も、ふたりは子供たちの笑い声を聞くために走り回りました。

「メリー・クリスマス!」
顔なじみのスノーマンが
二人の横を滑り抜けていきました。
彼は、これから麓まで降りて行って子供たちを喜ばせるのでしょう。
去って行く後ろ姿にトナカイが声をかけ、
「メリー・クリスマス!」
「お前さんも、がんばれよ」
サンタさんも激励を手向けます。


木々の上に宿る明かりに導かれて、サンタさんとトナカイは闇夜を走り続けます。


時には、煙突に登ることが難しいこともありますが…。
ふたりは、連係プレーで乗り越えます。
「行きますよー」
「そーっと、そーっと、じゃぞ」
…トナカイの釣りの腕を知っているサンタさんは
少し怖いみたいです。


大変なことも多い配達ですが、サンタさんは挫けません。
袋の中にたくさんたくさん詰めたプレゼントを、
ベッドの脇に吊るした靴下の中に丁寧に入れてあげます。