「あー、その顔は、いるって顔だな」


「……は? 何言ってんだ?」


次郎は急に話が変わってびっくりしただけだったのだが、太郎は勘違いをしてしまっているようだ。


「いるんだろ? 好きな子」


ニヤニヤしながら次郎の肩に手を置く太郎。


そんな太郎をちらっと見て次郎は手を払いのけた。


「いるっつうか、オレ彼女いるし」


「え?」


「だから、オレ彼女いるし」


太郎はしばらく無言で考えたあと、テーブルに突っ伏した。


「おい、太郎、どうしたんだよ」


次郎は太郎の意味不明な動きに戸惑いながらも、とりあえず理由を聞いてみた。


「負けた……弟に負けた……」


「あ、もしかして……彼女いねぇの? お前」


次郎が笑いながらそう言うと、ガバッと太郎は起き上がり、次郎の両肩をつかんだ。