「あんたたち本当に仲悪いわね……。小さい頃はあんなに仲良くしてたってのに」
「仲悪くなった理由の一つは母さんと父さんだからな。太郎と次郎なんて名前つけるから馬鹿にされたんだ」
次郎は頬杖をつきながら言った。
「え? よく聞こえないわ。ご飯のとき言ってよ」
「いっつもこの話題になると聞こえないふりするよな」
母のあまりにも分かりやすい嘘に次郎は呆れてしまっていた。
「ただいまー!」
玄関のほうから元気な声が聞こえる。
「あ、太郎だわ! お帰りー!」
母はまだボールで何かを混ぜながら玄関に向かう。
「ったく、やっと帰ってきやがったか」
次郎も渋々重い腰を上げて玄関に向かう。
「部活おつかれさま! 今日は母さんが腕によりをかけておいしいご飯作るからね! リビングで待っててね!」