「母さーん、夕飯まだ?」


明るいリビングに、少年の声が響く。


「もうちょっと待って! 今日は気合い入れてるんだから!」


ダイニングにいる母が叫ぶ。


「いつもイマイチな癖に何言ってんだ……」


「作ってもらってるんだから文句言わないの!」


「はいはい。つうか太郎まだ帰ってないのかよ」


少年は不満そうな顔をしてテーブルの椅子に座る。


「あら? まだ帰ってなかったの? 太郎」


母はボールを持って何かを混ぜながらリビングを覗き込む。


「帰ってねえよ」


「そういえば、あの子試合近いからとか意気込んでたわねぇ。ほら、引退試合ってやつ?」


「あんなやつ早く引退すりゃいいんだ」