「それでは!

広岬誇りの新鋭デザイナー
川嶋なみかさんを祝して!
三本締め!よおーーお!!」

パパパンパパパンパパパン!

「お疲れ様でした!!」

「ありがとう!みなさんのおかげです! 」
パチパチパチパチ




ショーはそれなりに盛況だった
知り合いぐるみでチケットは買うし、配るだろうし、当然か

何やら打ち上げは立食パーティーらしい
案内はそれなりに疲れたし、タバコが吸いたい



人の群れを抜けて、裏口から出た
ちょうどホールのエントランスに出たので
ソファに座りガラス張りの外を眺めた


夕暮れの夏風が
常緑樹を揺らしている


「あら? 淳 ? 」

振り向くと ミチルがいた




「…何してんのお前 」

「ショーに出てたのよ 淳は案内でしょ? 森野くんに聞いた」

「出るって知ってれば差し入れしてやったのに」

「借り出され〜の出演ちょっとなのに、恥ずかしいわよ
それより森野くん怯えてたわよ
淳に虐められたって 」

ミチルは面白そうにこちらを覗き込む



「虐められたのは俺 」

「またまた
タバコ吸うとこ探してるんじゃないの?
そこ入ったトコが喫煙室だよ」

「お 」



少し広めの部屋に、ソファが一列
クリーム色の壁には
誰が描いたかわからない、でも少しコッホの『星』風な絵が飾ってある


俺がタバコに火をつけると
ミチルはくわえたタバコを近付けて、髪をかきあげながら火をつけた

「は〜 疲れたぁ 」

「お疲れ 」

「なんかねえ モデルに誘われたよ」

「へえ 凄いじゃん 」

「まさかAV出た女ですけどいいですか?とは聞けなくてさ
はは」

「今はスナックの良いママやってる 」

「 うん しあわせだけどね…
調子乗って男と東京なんか出ていかなければ、人生なにか変わってたのかな。とか
少し考えちゃってさ… 」

「うざいと犯すよ」

ミチルは笑い声をあげる


「やっぱり淳は王子様だわ
昔とかわらないよ
あれ
携帯鳴ってない?」

微かな振動

「俺か 」


−着信:Asura :−