少々申し訳ない気分になり始め、机に目線を移したとき、ガラガラッといきおいよく前のドアが開いた。
ビクッと体を震わせたときには、もう雪乃の体は、すっぽりと誰かの体に抱き締められてた。
「誰…?」
「雪乃…よかった…本当、マジで…。」
「由季ちゃん?」
雪乃が名前を呼ぶと、抱き締める強さはさらに強くなった。
由季ちゃんは何度も何度も雪乃の名前を呼んだ。
雪乃が「由季ちゃん?」て言うたびに、由季ちゃんは「雪乃…雪乃。」て言うんだ。
「へへっ、ごめん。」
「由季ちゃん…?」
「ごめん。帰ろ。」
雪乃は今日、由季ちゃんに何回謝られただろう?
『ごめん。』て言葉、何回言われたかな?
それは、とっても辛いけど、きって『雪乃。』て言ってくれた回数の方が、多いよね?

