部屋に入ると制服を脱ぎながらもう一度カレンダーを見る。



(あまり自覚がないから気付かなかった…)



誠と美代子が言っているのは岩岳家の長子、つまり誠の姉の命日なのだ。


といっても、誠が生まれる前に事故で亡くなってしまったため、一人っ子当然の誠にとって姉がいたという自覚は少しもない。


その証拠に毎年命日に家族でするお墓参りの日も一年経つとてんで忘れてしまう。


そして今年も案の定忘れていた。


私服に着替え終わった誠は鉛筆立てから黒のマーカーを取り出す。


そのままカレンダーの姉の命日の日を丸で囲った。



「これでよし。」



円で囲った日を見て頷く。


その時、一瞬誰かの視線を背中に感じてすぐさま振り向いた。


だがそこにはいつもと変わらぬ自身の部屋の風景が広がっているだけだった。