「じゃあな!」


「おうっ。」



岩岳誠(いわたけまこと)は友達と別れると、夜の住宅街を自身の家に向けて歩き出した。


誠は都内では有名な進学校に通っており、今年は受験生。


大学進学のために塾にも通っている。


そして今はその塾の帰りなのだ。


何も変わらない日常。


だが今日はちょっとだけ違った。


それは──



ヒタ
ヒタ
ヒタ



(……付けられてる?)


友人と別れて少ししたところからずっと後を付けられていた。


そこで少し疑問を感じる。


女性なら付けられるのも解るが自分は男。


敢えて言うならば、美形でもなければショタ系でもない。


見た目は眼鏡を掛けたただのガリ勉野郎だ。


ある種の趣味を持ち合わせた人は別として、こんな自分が付けられるとは考え難い。


そんなことを考えながら誠は不意にその場で立ち止まった。


そのままの勢いで後ろを振り向く。


しかしどこにも人影など見当たらない。


首を傾げて再び家に向けて歩き出した。