「…おもしれぇ」
相手は口元を緩めた。
初めてかもしれない。

気持ちが高ぶっていく。

「…おいアンタ、」
相手のリーダー的存在の彼に言われて初めて動きを停止した。

「あ!っ……あ、あれ?」
みるみるうちに頬が赤く染まっていく。

…やっちゃった。

「ぜひ姐さんと呼ばせて下さい!!!」

「ええっ!?」

今まで悠真と喧嘩していた彼が言うのだ。
依奈はどうすることも出来ない。

「ね、姐さんはやめてほしいな…」

出来るだけにっこりと作り笑を浮かべれば相手は目を見開く。

「姐さん!美人っす!」
「…あ、あありがと」

もうどうしたらいいのか分からない。
「自分は瀬戸海斗(せと かいと)です。よろしく!」

急に自己紹介されて、
強制的に携帯を奪い取られ、
連絡先を入れられた依奈は放心状態。

後ろで悠真は声を殺して笑っていた。

「…お前が姐さんの彼氏って事は認めねえぜ?」
すれ違い様、海斗は悠真に言った。

聞こえていた依奈は 違う! と言おうとするが既に遅い。

怪我した仲間を連れて歩いていってしまっていた。