「…奏くんのばか」

煩いくらいに心臓が高鳴る。キスされて嫌じゃない自分がいる。

なんだか分からなくなった。とりあえず昨日の続きの荷物をまとめてしまおう。

泊まる場所も決めないと!

依奈が気合いをいれ、洗面所をでた時だった。


ピンポーン

二度目のチャイムがなる。

がちゃり、
ドアを開く音が聞こえた。

「奏、来てやったぜ」
この声音は知っている。

体が一瞬震えた。

「ブスいんだろ。呼べよ」
同じクラスの、

「…おはよう、悠真くん」

佐藤悠真。

悠真は現れた依奈を見ると口元を緩め、素早く動いた。

ス、
頬に拳がかすった。
とっさの事に反応が遅れたがなんとか避けた。

「…やっぱ、おもしれえ」
「悠真、やめろ」
奏が悠真を睨む。

「怒んなよ、奏。手伝いにきてやったんだから」
「別に要らねって」

奏は大きなため息をついた。