呆然とした。

そういう風に自分を見ていたんだ。

その気持ちには答えられない自分がいる。

ごめん。

きっと謝れば彼は怒るだろう。

あたしは…、?

橘薫が好きだった。
けれど諦めようと決めた。
奏くんが好きだ。
けど、それは恋愛対象としては違う気がする…

「…まだ、良く分からないよ」

「…だから、返事いらねぇって」

依奈は笑った。
「でもありがとう、嬉しいよ」
普通の姉ならばこんな返事はしないだろう。

奏も笑った。

「これから、覚悟しとけよ」
「へ?」

「俺、まわりとか気にしないから」

顎を軽くあげられ、唇にキスが落ちる。

吃驚して目を見開くと奏は口端に噛みついた。

「っ、」
「俺とキスしましたっていう印。」

離れてから、にやりと笑う奏に依奈は顔を赤くし洗面所へと向かった。

「……あ、ありえないよ」

くっきりと口端に赤い跡が残っている。

「…」

こんなので学校行けば、からかわれるに違いない。