自分はひどい人間かもしれない。諦める事を決めてもすぐにはできないのだから。
『今度行こうよ!依奈』
「うんっ!」
元気よく返せば、恵美の声音も明るくなった。
「…そういえばね、言わなきゃいけない事があるの」
父親の会社が倒産して、金がないためアパートの家賃が払えなくなったこと。
明後日でアパートを出なければいけないことを言った。
『依奈、明後日は家族で夜出かけるから無理だけど明明後日からならいつでも泊まりに来なさいよ?』
労るような、哀れむような声ではなく普通に言ってくれた事がなにより嬉しかった。
「ありがとう、恵美ちゃん」
やっぱり、友達って良いなあ。そう感じた瞬間だった。
明後日何処に泊まるかは明日決めよう。
『じゃあ、私お風呂入ってくるから切るわね』
「うん、ばいばい」
ピ、
電話を切れば部屋の入り口に大きい段ボールが置かれていることに気づいた。
どうやら要らないものは実家に送るらしい。
