「…話しがあるんでしょ?」
映画館の入り口横。
恵美は呆れたような瞳で依奈を見た。
「あ、あたしにっ…気に入らないとこがあるなら、言ってほしい…の」
恵美は依奈を真っ直ぐ見た。
別に依奈を嫌いなわけじゃない。ただ嫉妬しているだけなのだ。
彼女は何も悪くないのに、今にも泣きそうな表情をさせてしまっているのは自分だ。
「依奈、私ね…」
ちゃんと言おう。
依奈がもし、薫を好きでも私の気持ちは変わる事はない。
「最初は、橘薫のこと好きじゃなかったけど…今は、本気で好きなの」
「…うん!」
「依奈に嫉妬してたんだ。薫、あんたの事気に入ってるみたいだから…」
依奈は安心したように笑った。自分が何かしたのではないかと不安だったから。
「…何泣いてるの?わ、私何かした!?」
気付かないうちに涙を流していたらしい。
依奈は袖で涙を拭った。
