「……なあ、依奈ちゃん」
自然と唇が動く。

「俺にしない?」
「…え?」

「俺、留年してるけどっ…その、依奈ちゃんのためなら勉強するし、真面目になるし、」

「ちょ、ちょっと待って!」
駄目だ、止まらない。

「別に、依奈ちゃんが眼鏡かけててもそうじゃなくても俺は好きだよ」

腕を掴まれた。
どうしよう、この状況って…。

ちゅ、
額に何かが触れた。
秋は真っ赤な顔を手で隠す。

唇にしなかったのは、優しさなのかもしれない。
「おれ…なにしてんだろ///」

上映中はぽかんとしている依奈を直視できなかった。

後悔はないが、恥ずかしい。

「秋くん」
凛とした声音で自分を呼んだ。

「ありがとう、あたし、嬉しい。」
誰かに好きになってもらう事が素直に嬉しいのだ。

自分が地味でも、そうでなくても、秋は好きだと言ってくれた。

こんなことは初めてで、依奈は自然に微笑んでいた。