『たすけて、誰か…いやぁー!』
主人公の女性が殺されそうになっている。
依奈と秋はお互いしがみつく。

「よ、予想以上の怖さだな…」
「か、かえりたいよぉ…」

ふと、依奈は二列前をみる。
薫が、恵美の顔を覗きこんでいるように見えた。

そして、

「あの二人…キスしてねえ?」
こんなムードのない映画を前にキスするのか疑わしかったが確かに見た。

依奈は反射的に視線をそらす。

「…依奈ちゃん?」
「…やっぱり、デートの邪魔は良くない。」

さきほどの映画の恐怖で流れた涙とは違う、別の涙を瞳いっぱいにためていた。

「…もしかして、依奈ちゃん…」
もし、今思った事が本当なら自分はヒドい事をしていたらしい。

「…ごめん」
聞こえたかわからないが、ただ一言謝った。

ぎゅう、
ふいに秋の手が握られる。
「あたしは、薫くんの事好きじゃないよ。」