「…あ、これ…」
依奈は吃驚した。
弟がでてくると思っていたのに、まさか友達がでてくるなんて。
秋はぽかん、として依奈を見ている。
「そ、奏くん。」
「分かったから、さっさと行けって!」
「え、え?」
後からでてきた奏に背を押されて慌てて階段を降りる。
見られてしまった。
後から怒鳴られるだろうな、と思いながら依奈は戸惑った。
*
「奏!!」
秋の煩いくらいの声に彼を睨む。
「…んだよ。」
「すっげ、美人じゃん。紹介して」
…始まった。
依奈は眼鏡とおさげ、欲をいえば前髪をどうにかすればかなり美人だ。
だから見られたくなかった。他人に惚れられるのが嫌だったのだ。
依奈は勘違いしているらしいが、その方が都合いい。
「…あー、…とりあえず今見たことは忘れろ。記憶から抹消しろ。」
「なんでだよ!」
「どうやら、奏ちゃんはお姉ちゃんを取られたくないんやな?」
ムカつく関西弁を話す、 薫(かおる)はニヤリと笑った。
…頭痛がしてきた。
