「ねえ、どこ行くの?」
「しっ、」

秋は依奈の口を押さえた。雑貨店の前で立ち止まり外から中の様子を伺う。

「…薫が、デートするとか言うから俺は悠真先輩に頼まれて尾行する事んなったの。」

雑貨店で薫を探しながら、秋は言う。

「ジュース三日分だってさ、依奈ちゃんにも別けてやるから協力してくれねえ?」

「けど…尾行はマズいんじゃあ…」
「大丈夫だって、バレないし。」

自信満々で笑う秋に、依奈はため息をついた。
正直なところ、薫と恵美がどうなったか気になっていた所だ。

いけない事と分かっていながら、依奈は協力する事にした。

「はっけん、」
秋の言葉に、自分も彼の横にしゃがみ中を覗く。

どうやら、リングを見ているらしい。

(…ペアリング?)
だが、見たところ一つしか買ってない。

ペアではなさそうだ。

「…誰にあげるつもりなんだろうな!」

「うーん、恵美ちゃんにではなさそうだし…自分にでもなさそう」

綺麗にラッピングして貰っている薫をみて依奈はそう言った。