「…ん。」
短い返事だか頷いたのが分かった。
「…だめだよ、飲んじゃ。」
昔からお酒には弱い。
中学の時にふざけてのんで大変な事になったのは自覚しているはずだ。
「…姉貴、」
依奈を 姉貴 と呼ぶ時は大抵酔っている時か風邪をひいている時しかない。
「…なあに?」
できるだけ優しく問えば、奏は普段の彼からは絶対見れない、照れたような表情で言った。
「だいすき」
それだけ言うと酔いがまわり眠たくなったのか、数秒で寝てしまう。
「っ…」
今、依奈の顔は林檎よりも真っ赤に染まっているかもしれない。
「…奏くんの、ばか」
どうして急にこんな一面を見せるのだ。
心臓がドキドキと煩い。
明日になればまたいつもの彼に戻っているに違いないが、意識せずにはいられなかった。
「あたしも…だいすきだよ」
眠っている彼に静かにそう告げた。
