「ど、どういう意味…?」
「…。」

奏は何も言ってくれなかった。
腕を掴まれ、身動きできなくなる。

「奏く、」

瞬間、押し倒されて唇が奪われた。
「ん、ふ、」

舌が口内に侵入する。
思考が停止した。
頭がくらくらしてくる。

「あ、ふあ…」
やっと唇が離れたと思い奏を見た。

余裕がない、泣きそうな表情で自分を見ている。

「…奏くん?」

姉を失ってしまうかもしれない。誰かに奪われてしまう。
そう考えるだけで可笑しくなりそうだ。
「…いっそ、可笑しくなりてえよ」

ずっと好きだった。
美人で自慢の姉だった。
けれど美人すぎて、モテすぎる彼女を見たくなかった。

だから、奏は依奈が地味になるように仕組んだのに。

依奈の素顔がバレたら意味がない。

不安がかけめぐる。

「奏くん、あたしは奏くんが好きだよ」
恋愛感情とは違う目で自分を見るのだ。

「…簡単に言ってんじゃねえよバカ。」

ただ、ムカついたのだ。
何も知らない依奈が好きすぎて嫌いだ。

「…奏く、」
「早く風呂入れよ」

それだけ言うと、依奈から離れ部屋をでていった。