「嫌ならくんな」

「素直じゃないなあ、奏ちゃんは」
ニヤニヤしながら奏を見る薫に、彼は少し頬を赤く染める。

「奏ちゃんは依奈ちゃんにもきて欲しいんやて。だから…おいで?」
にっこりと笑う薫を見て、依奈は頷いた。

格好良い。

そう思った。
心臓が大きく鳴りはじめる。
なんだろう、コレ。

奏を想う気持ちとは違う。

「依奈ちゃん?」
「…ほっとけ。こんなやつ」

名前を呼ばれて、どうしてこんなに嬉しいのか分からない。

「どーしたん?」
顔を覗きこんでくる薫に吃驚して後ろにひいた。

「ひゃっ!」

「なんかさっきから変やで?…あ、もしかしてオレに惚れた?」

「バカかお前は。依奈にかぎってそんな事ねえだ……ろ?」

顔を真っ赤にして固まる依奈を見て、奏の動きも止まった。

「あらら、図星やった?」
薫はニヤリ、と口元をつりあげる。

「…マジかよ」

薫を家に呼ばなければよかったと本気で思った瞬間だった。